等級体系を大幅刷新──“その道のプロ”を追求できるキャリアパス整備への「想い」
「2つの等級体系」導入で、キャリア形成や貢献スタイルの多角化に対応
──早速ですが、今回導入された「2つの等級体系」とは、どのような制度なのでしょうか?
特定の専門知識やスキルを発揮し、個人成果の最大化で貢献する“スペシャリスト”と、組織のビジョンや戦略を策定し、メンバーの意欲・生産性を向上させて組織成果の最大化で貢献する“マネジメント”を設定し、社員の想いを尊重したキャリア形成ができる等級体系を意味します。
かつての役割等級制度では、昇級するにはいわゆる組織責任者の役割を担うことが大半で、たとえば技術者がプレイヤーとしてその道を究め、それに見合った評価・報酬を得るという道は極めて狭き門でした。新しい等級体系下では「技術部長より報酬が高い技術スペシャリスト」の出現も可能です。
かつての役割等級制度では、昇級するにはいわゆる組織責任者の役割を担うことが大半で、たとえば技術者がプレイヤーとしてその道を究め、それに見合った評価・報酬を得るという道は極めて狭き門でした。新しい等級体系下では「技術部長より報酬が高い技術スペシャリスト」の出現も可能です。
──具体的には、どのような構成になるのでしょうか。
“スペシャリスト”については専門領域の規模や専門性の高さでSAからSFの6等級とし、全ポジションにおいて、各職場における職務ごとに求められる要件を「役割・人財要件定義書」で具体的に明文化しています。
“マネジメント”についてはMG1からMG6の6等級とし、等級ごとに統括部長や部長、課長といった役割が紐付きます。
“マネジメント”についてはMG1からMG6の6等級とし、等級ごとに統括部長や部長、課長といった役割が紐付きます。
──入社後いずれかのタイミングで、どちらの等級体系に進むか社員が選択するのでしょうか。
“スペシャリスト”と“マネジメント”のコース間も、上下の等級間も、シームレスに行き来ができます。変化の激しい時代において、さまざまなことに挑戦していく中で、キャリアの志向性も変化することは、十分にあり得ることです。会社も個人も変化に柔軟に対応できる力を身につけ、意識と行動をアップデートしていく必要があると考えています。
──パナソニック インダストリーは、なぜ「2つの等級体系」を導入したのでしょうか?
これまでのパナソニック インダストリーでは、組織力を最大化し、組織ミッション達成を通じて経営に貢献する組織責任者(マネジメント)と、それぞれの領域における専門性を発揮し、個人で組織・経営に貢献する非組織責任者(スペシャリスト)の間に大きな役割の違いがあるにもかかわらず、同一の等級体系内で運用してきました。
その結果、上位職として、より大きな貢献を果たしていくためには、組織責任者に従事することが慣例化しており、画一的なキャリアルートが中心となっていました。しかしながら、キャリア形成や貢献の在り方への価値観が多種多様になっていることを踏まえ、会社の変化対応力の拡大を図るために、等級体系の見直しをしました。
100人いれば100通りのキャリアプランがある中で、パナソニック インダストリーの企業理念に共感され、ここで働きたいと選んでくださった方々の想いに応え、挑戦・成長できる機会を提供できる人事でありたいと考えています。
社員の“個人の想い”と“会社のめざす姿”をつなげること、それこそをパナソニック インダストリーの人財戦略ととらえ、2022年4月の事業会社化以降、続々と人事制度の改革を進めています。「2つの等級体系」導入は、その一環です。
その結果、上位職として、より大きな貢献を果たしていくためには、組織責任者に従事することが慣例化しており、画一的なキャリアルートが中心となっていました。しかしながら、キャリア形成や貢献の在り方への価値観が多種多様になっていることを踏まえ、会社の変化対応力の拡大を図るために、等級体系の見直しをしました。
100人いれば100通りのキャリアプランがある中で、パナソニック インダストリーの企業理念に共感され、ここで働きたいと選んでくださった方々の想いに応え、挑戦・成長できる機会を提供できる人事でありたいと考えています。
社員の“個人の想い”と“会社のめざす姿”をつなげること、それこそをパナソニック インダストリーの人財戦略ととらえ、2022年4月の事業会社化以降、続々と人事制度の改革を進めています。「2つの等級体系」導入は、その一環です。
パナソニック インダストリーの人財マネジメントシステム
──「2つの等級体系」以外では、どのような改革を進めているのでしょうか。
社員が自分の強みを活かしながら成長するためには、自分のキャリアを自分で選択できることが必須です。
そこで、まず、「役割・人財要件定義書」を整備しました。2024年4月時点では、5,000を優に超える係長級以上の全ポジションに役割と人財の要件定義を定め、公開しています。個人と会社が対等な“選び・選ばれる”関係になるべく、社員にとってはキャリア自律や自己発意での挑戦のベースになり、会社にとっては求める人財要件を明確にするものとなります。
人事異動については、公募型異動・登用制度「Iチャレンジ」を活用して、社員が自らポジションへ応募していくことを促進しています。2022年秋の導入以来、2023年度末時点で1,500名以上が公募にチャレンジしています。
そこで、まず、「役割・人財要件定義書」を整備しました。2024年4月時点では、5,000を優に超える係長級以上の全ポジションに役割と人財の要件定義を定め、公開しています。個人と会社が対等な“選び・選ばれる”関係になるべく、社員にとってはキャリア自律や自己発意での挑戦のベースになり、会社にとっては求める人財要件を明確にするものとなります。
人事異動については、公募型異動・登用制度「Iチャレンジ」を活用して、社員が自らポジションへ応募していくことを促進しています。2022年秋の導入以来、2023年度末時点で1,500名以上が公募にチャレンジしています。
──自由に自分の好きなポジションで働ける、夢のような施策に聞こえます。
社員が自分のキャリアを自ら考え、行動に移し、実現できるチャンスがある、という一方で、これは市場の競争原理を社内にも取り入れているという厳しい側面があります。
公募においても選考面談を行いますので、「役割・人財要件定義書」に明記された知識やスキルを満たし、そのポジションに一番ふさわしいという評価を得た人が登用されるということになるんです。
同じく、公募する側にも競争原理が働きます。「役割・人財要件定義書」に書かれた内容に魅力がなければ、社員の応募が集まらないでしょう。なので、魂を込めて定義書を書くことが重要になりました。
公募においても選考面談を行いますので、「役割・人財要件定義書」に明記された知識やスキルを満たし、そのポジションに一番ふさわしいという評価を得た人が登用されるということになるんです。
同じく、公募する側にも競争原理が働きます。「役割・人財要件定義書」に書かれた内容に魅力がなければ、社員の応募が集まらないでしょう。なので、魂を込めて定義書を書くことが重要になりました。
──選び・選ばれる自由には、厳しさも付きものなんですね。
結果として、よい変化もさまざま生まれています。
まず、公募する側では、組織やポジションの魅力向上を考える動きが始まっています。当社のスローガンは「見えないところから、見違える世界に変えていく」ですが、この“見えない”を“見える”ようにしていくことは、自分たちの仕事の魅力ややりがいの棚卸しになるんです。
そして挑戦する側には、主体的に学び実力を身につけることが欠かせません。この点は、いつでもどこでもみんなが学べる研修情報プラットフォーム「マナビバevery」を準備し、誰でも自由に自分のタイミングで研修が受けられるようにしています。加えて、公募の選考後、残念ながら今回は見送りになった人にも、必ず1on1によるフィードバックを行い、次なる挑戦への気づきが生まれるようにしています。
何かと公募型異動・登用制度に注目がいきますが、全社員へ公募を強いるものではありません。公募型を導入したことにより、あらためて「自分はここで専門性を磨きたい」と考える社員も出てきています。社員一人ひとりが自分のキャリアを見つめ直した結果、専門性をもって事業への貢献をしていこうという方たちも上位等級に進める道を「2つの等級体系」が可能としています。
まず、公募する側では、組織やポジションの魅力向上を考える動きが始まっています。当社のスローガンは「見えないところから、見違える世界に変えていく」ですが、この“見えない”を“見える”ようにしていくことは、自分たちの仕事の魅力ややりがいの棚卸しになるんです。
そして挑戦する側には、主体的に学び実力を身につけることが欠かせません。この点は、いつでもどこでもみんなが学べる研修情報プラットフォーム「マナビバevery」を準備し、誰でも自由に自分のタイミングで研修が受けられるようにしています。加えて、公募の選考後、残念ながら今回は見送りになった人にも、必ず1on1によるフィードバックを行い、次なる挑戦への気づきが生まれるようにしています。
何かと公募型異動・登用制度に注目がいきますが、全社員へ公募を強いるものではありません。公募型を導入したことにより、あらためて「自分はここで専門性を磨きたい」と考える社員も出てきています。社員一人ひとりが自分のキャリアを見つめ直した結果、専門性をもって事業への貢献をしていこうという方たちも上位等級に進める道を「2つの等級体系」が可能としています。
“個人の想い”と“会社のめざす姿”をつなぐ人財戦略「想いを、動かせ。」
──先ほど「社員の“個人の想い”と“会社のめざす姿”をつなげることがパナソニック インダストリーの人財戦略」とのお話がありました。今一度、この人財戦略について教えてください。
2030年のあるべき姿として定めたビジョン「未来の兆しを先取り、お客様と共に社会変革をリードする」の実現に向け、パナソニック インダストリーは“人”を中心に据えた経営を実践しています。
社員一人ひとりの“想い”を起点に、人と組織が共に成長し続ける会社をめざしており、社員が“想い”を動かし、取り組みを推し進めることで、ビジョンが実現すると考え、策定した人財戦略コンセプトが「想いを、動かせ。」です。
私たちは「社員一人ひとりの“想い”を実らせる」ことを大切にしています。想いが芽生え、それを大切に育み、形にすることで、想いが実る。さらに実った思いが伝播し、新たな思いが芽生え、これを繰り返すことで一人ひとりが提供できる価値がより高まっていく。この好循環を「想い無限サイクル」と名付けています。
この「想い無限サイクル」の動力源となる施策を開発・展開し、循環を後押しして、「目的・未来志向で挑戦し続ける企業風土」を実現することが、人事の役割だと考えています。
社員一人ひとりの“想い”を起点に、人と組織が共に成長し続ける会社をめざしており、社員が“想い”を動かし、取り組みを推し進めることで、ビジョンが実現すると考え、策定した人財戦略コンセプトが「想いを、動かせ。」です。
私たちは「社員一人ひとりの“想い”を実らせる」ことを大切にしています。想いが芽生え、それを大切に育み、形にすることで、想いが実る。さらに実った思いが伝播し、新たな思いが芽生え、これを繰り返すことで一人ひとりが提供できる価値がより高まっていく。この好循環を「想い無限サイクル」と名付けています。
この「想い無限サイクル」の動力源となる施策を開発・展開し、循環を後押しして、「目的・未来志向で挑戦し続ける企業風土」を実現することが、人事の役割だと考えています。
見えないところから、見違える世界に変えていく
──「2つの等級体系」を含む、人財マネジメントシステムの刷新を進める中で見えてきた課題や、社外からの評価について教えてください。
まずは社外からの評価ですが、私たちの“想い”を起点にした取り組みは、導入以来「日本の人事部 HRアワード」や「キャリアオーナーシップ経営 AWARD」への入賞という評価をいただきました。私たちも自分たちの方向性に手応えを感じています。
課題面では、制度やシステムというハードが整いつつあるけれども、まずは「ドアを開ける」ことを最優先したので、100%の状態でローンチしたわけではなく、プロセス面では改善が必要です。
加えて、それを利用する社員の心構えであるソフトの部分は、まだ変革の最中です。想いを動かすのは、リーダーだけじゃなく、メンバーも含めた全員なのですが、戦後の日本企業によく見られた価値観の中で、上司の指示を待って実直に任務をこなすという価値観も一定数残っています。「想いを、動かせ。」というコンセプトには、そうした社員の真面目で真摯な面を残しつつ、それぞれが持つ潜在的な願いや能力を引き出したい、挑戦を促したい、という意図も込めています。
課題面では、制度やシステムというハードが整いつつあるけれども、まずは「ドアを開ける」ことを最優先したので、100%の状態でローンチしたわけではなく、プロセス面では改善が必要です。
加えて、それを利用する社員の心構えであるソフトの部分は、まだ変革の最中です。想いを動かすのは、リーダーだけじゃなく、メンバーも含めた全員なのですが、戦後の日本企業によく見られた価値観の中で、上司の指示を待って実直に任務をこなすという価値観も一定数残っています。「想いを、動かせ。」というコンセプトには、そうした社員の真面目で真摯な面を残しつつ、それぞれが持つ潜在的な願いや能力を引き出したい、挑戦を促したい、という意図も込めています。
──西阪さんは人事戦略統括部長として、パナソニック インダストリーをどんな会社にしていきたいと思っていますか。
一人ひとりがイキイキと活躍できる、成長や幸せを感じる会社にしたいですね。“想い”の実現をサポートする「想い無限サイクル」が好循環することで、社員が「仕事を通じて成長できている実感」「ミッションに貢献できている実感」を感じられる会社にしていきたいです。
今回の「2つの等級体系」導入は“スペシャリスト”の道を開拓しました。同時に、“マネジメント”の道を究めてもらうためのミドルマネジメント向け研修やネットワーク構築も、強化を進めています。“マネジメント”は組織を率いる能力に長けたスペシャリスト、という認識です。
これからも、事業環境の変化を踏まえた人事戦略の進化は必須だと考えています。企業理念や人財戦略コンセプトは不変のものですが、人事制度はそうではありません。社員が使いやすいように、喜んで使ってくれるように、状況に応じたアップデートを今後も進めていきます。
今回の「2つの等級体系」導入は“スペシャリスト”の道を開拓しました。同時に、“マネジメント”の道を究めてもらうためのミドルマネジメント向け研修やネットワーク構築も、強化を進めています。“マネジメント”は組織を率いる能力に長けたスペシャリスト、という認識です。
これからも、事業環境の変化を踏まえた人事戦略の進化は必須だと考えています。企業理念や人財戦略コンセプトは不変のものですが、人事制度はそうではありません。社員が使いやすいように、喜んで使ってくれるように、状況に応じたアップデートを今後も進めていきます。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです