幼少期からの悩みを「想い」に変え、センシング技術で「より良いくらし」を追求
肌分子を“見える化”して、不調の予兆を早期に見つけたい
紫藤が過去に取り組んできた、肌から採取した分子を分析するシステム開発の中でも、採取した肌分子を分析が可能な状態に濃縮・精製する技術の開発について語ってもらった。
「不調の予兆を早期に発見する」ことをコンセプトとし、既存の肌状態を調べる装置とは違って、目には見えない分子レベルで肌の状態を調べることをめざしたものだった。
それだけにやりがいがあると紫藤は力強く言う。
この技術は、化粧品分野への展開を考えているが、専門家だけでなく一般の方にも使っていただくことを想定している。しかも、食品の分子や環境中の分子など、応用は無限だ。
一人ひとりのくらしの質を向上させることに、つながっている。
好奇心旺盛!自由研究が大好きな子ども時代
紫藤は、幼いころから自分の身のまわりにあるものがどう作用し、どう反応が起きているのか、という理科的な事象に興味があった。
夏休みの自由研究も大好きで、ある時は自宅キッチンにある調味料をかき集め、水に溶かして凍る時間の違いを調べてみた。
塩や砂糖を加えた水は、水単体だけよりも凍る温度が低く、それぞれ異なることが不思議だった。それが「凝固点降下」という現象であることを知ったのは、だいぶ大きくなってからのこと。
紫藤の化学分野への興味は尽きることなく、大学進学時も化学系へと進んだ。
新しいものをつくって、世の中のスタンダードにしたい
大学の研究室で、紫藤は生体材料を用いた分析手法の研究を行った。研究者や医療機関に向けた高感度な分析手法の開発で、従来よりも微量なターゲットの検出を可能にするものだ。ただ、手順も難しく大がかりな機器が必要になってしまう。
紫藤は悩んだ。専門的な研究者だけしか扱えないのでは、用途は限られてしまう。精度はゆずれないが、汎用性もゆずれない。そして、考えた。
化学分野や医療機関ではない、新たな就職への選択肢が見えてきた。さらに、紫藤はシステムの普及拡大も願っていた。
グローバルに事業展開している点でも、多分野の商材を有している点でも、パナソニックに大きな可能性を感じた。
他にも、紫藤の背を押したものがある。リクルーターの存在だ。気さくな雰囲気、親身な対応を見て「この人たちと働きたい」と、自然にそう思えたのだった。
見えないところから、見違える世界に変えていく
これまでは、肌の不調をセンシングすることを研究してきた紫藤。
現在は、「におい」という分子を相手に、人工嗅覚センサの研究開発を進めている。吐く息の成分がヒトによって異なるという性質を利用し、特定の信号パターンを検出して個人認証や人物特定に役立てるという期待がある。
「見えないところから、見違える世界に変えていく」──紫藤の目には、センシング技術でかなえる、より快適なくらしが見えている。