Uターン転職でグローバルに活躍──盤石な工場を未来へつなぎたい「想い」
原価管理のスペシャリストとして、世界へ供給する電子部品をコスト面でサポート
山崎は大学院卒業後、愛知県の車両関連のメーカーで原価管理や事業企画を担当、米国にも駐在し、経験を積んできた。
福井県に位置するデバイスソリューション事業部 森田拠点は、PCやスマートフォンなどのICT機器用、車載用、サーバや基地局といった産業機器用など、多種多様な電子デバイスの開発と生産を行っている。
中でも、抵抗器はあらゆる電子機器に搭載される重要な部品。長期間、さまざまな環境下で使用されながらも劣化が少ない、高耐久性が求められる。近年、自動車は電動化や自動運転の進化で制御回路が増加し、1台に3,500~5,000個の抵抗器が搭載され、車載需要が急伸。森田拠点は中国やシンガポールの製造拠点と連携しながら、国内外のさまざまなメーカーへ製品を供給する。
その森田拠点で、製造の原価を管理し、利益改善に挑むのが山崎のミッションだ。めざすところは、売価とコストマネジメントによる利益の最大化。工場の生産体制や使用する材料などに目を向けつつ、決算報告のベースになる数値計算やお客様への売価見積もりの作成など、仕事の内容は社内外の多岐にわたる。
私の仕事はお金の観点から利益を生み出す源泉を考え、調達・製造に加え、技術や品質管理部門など多岐にわたる部門と交渉し、広く調整すること。精度や品質を落とさずにコストを下げるにはどうすればよいのか、担当者を巻き込みながら、良い製品を少しでも安く、安定的に生産できるよう、課題に向き合っています」
職位、職域を越えたフラットな風土。協業を導き、億単位のコスト改善を実現
製造現場でどんな製品がどう作られるのか知らなければ、原価管理は成り立たないというのが、山崎の想いだ。抵抗器はなじみのない商材だったが、入社後、足しげく製造現場に通い、製品の知識を意欲的に吸収した。
どのような材料を使用していて、どのような工程で生産されているのか、お客様が求める価値はどこにあるのか──。製造の知識を身につけていくと、帳簿の上の数字から、現状とあるべき姿、そして改善すべき課題が見えるようになってきた。
森田拠点では、モノづくりに関するオープンな勉強会が開かれていて、そこでたくさんの学びを得ました。
パナソニック インダストリーの特徴は社員同士が非常にフラットに連帯できるところ。自分の専門性にもとづいて、自分の意見を遠慮なく言えるし、職位の高い人もきちんと耳を傾けてくれます。これからも、より現場の視点と想いを大切にしたいと思っています」
山崎の働きかけで、効率改善を達成できたことがあった。
原因を探っていくと、業務フローに課題があることに行きつきました。しかし、調達や製造の担当者には『材料在庫が足りなくなると、製造が止まってしまう』といった不安があり、単に材料在庫の削減を呼びかけても改善は前に進みません。直近のデータなどを集め、粘り強くディスカッションを重ねることで、複合的な業務の改善を進め、40%を超える在庫削減を実現できました」
その効果は、億単位。
帳簿上の数値という客観的な指標には、現場では気づきにくい課題が隠されています。私たち管理部門が工場全体を違った角度から見渡せば、これまで見えなかった課題を浮き彫りにし、新しい視点で提案ができるとあらためて学ぶことができました」
「グローバル×専門性」への研鑽を重ね、キャリアをステップアップ
山崎がもう一つ意識しているのは、自身の専門性を高めることだ。
専門的な会計の勉強を始めてから、これまで経験に頼っていた部分をロジックに落とし込んで理解ができ、改善提案を行うときも論理立てて説明できるようになりました」
自己研鑽を重ね、周囲を引っ張って仕事を進めてきた山崎に、スペシャリストとして課長相当職への昇進のチャンスが巡ってきた。
パナソニック インダストリーは、パナソニックグループ共通であった従来の等級制度を大幅に独自刷新し、“マネジメント” “スペシャリスト”という「2つの等級体系」を2024年4月に導入。森田拠点にも原価管理のスペシャリストとして課長相当職のポジションが設置された。挑戦に迷いはなかったと山崎は言う。
加えて、米国駐在時に共に働いた現地の女性経理シニアマネージャーの仕事ぶりにも影響を受けました。堂々と物おじせずにズバズバと切り込む姿。ただ数値を管理するところにはとどまらない存在で、拠点運営をかじ取りする姿勢に憧れを抱きました。
私も彼女のように高度な拠点経営に関する情報をキャッチしながら、広い視点で工場全体を見ることができるようになりたいと思っています」
見えないところから、見違える世界に変えていく
日々の仕事の中で、山崎がモチベーションとしているのは「もっと良い工場へ」との想い。周囲とめざすべき姿を共有し、皆で実現していくプロセスが楽しく、やりがいがあると話す。
仮に赤字拠点となれば、働いている人も切羽詰まってしまい、ポテンシャルを発揮して働くことが難しくなる、と山崎は言う。今後も会計領域の専門性を高めてスペシャリストとしての道を究めるのか、聞いてみた。
職場の幸福度、満足感と、工場の経営状況には相関関係があると思っています。ゆくゆくは工場全体を俯瞰して、運営や経営方針といった意思決定にも、グローバルかつ会計的な視点から積極的な提案を行えるように、さらに自分の強みを伸ばしていきたいと思っています」
原価管理の仕事でモノづくりの下支えをし、見えないところから、見違える世界に変えていく──。その範囲は、福井のみならず密に業務連携をしているアジアの各拠点にも及ぶ。「利益・コストをしっかりと管理し、『より良い工場へ』」という山崎の想いは、海を越えてグローバルに羽ばたいていく。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです