学生との共創が生む人事革新の可能性──世代の壁を超える働きがいへの「想い」

新たな視点で人事課題の解決に挑む

──まずは大学生との共同プロジェクトが生まれたきっかけから教えてください。
「学生が学んでいることがビジネス社会でどう活かせるかを自分たちで考え、ビジネスパーソンにフィードバックをもらえる場を用意できませんか」という、立教大学経営学部の田中 聡先生からの相談が今回のプロジェクトのきっかけです。私は副業で立教大学での授業を担当しているのですが、BtoB企業である当社は、学生の間での認知度が低いことを実感しています。
このプロジェクトを通じて、学生に当社へ興味を持ってもらい、当社の人事課題に対して斬新な視点から解決のアイデアを提案してもらうことは、当社にとってもいくつかのメリットがあると考え、共同プロジェクトの実施に至りました。
このプロジェクトを通じて、学生に当社へ興味を持ってもらい、当社の人事課題に対して斬新な視点から解決のアイデアを提案してもらうことは、当社にとってもいくつかのメリットがあると考え、共同プロジェクトの実施に至りました。
──プロジェクトではどのようなことを実施したのでしょうか?
約1カ月の短期プロジェクトでした。田中ゼミの学生に現在当社が抱えている人事課題を2つ提示し、その解決策を提案してほしいと依頼しました。その後、学生は4つのグループに分かれて活動し、最終日に当社CHROを含むメンバーに対してプレゼンテーションを実施しました。
学生に提示した1つめの課題は「関東圏の理系学生100人が入社したくなる採用方法を提案せよ」というものです。国内の労働人口が減少する中で、当社は関東圏での採用活動にとくに苦戦していますので、この課題への提案をお願いしました。
2つめは「若手社員がコアラのように職場にしがみつきたくなるような案を提案せよ!」です。若手社員が職場や仕事を好きになり、イキイキと活躍してもらいたいという想いでお願いしたお題です。
学生に提示した1つめの課題は「関東圏の理系学生100人が入社したくなる採用方法を提案せよ」というものです。国内の労働人口が減少する中で、当社は関東圏での採用活動にとくに苦戦していますので、この課題への提案をお願いしました。
2つめは「若手社員がコアラのように職場にしがみつきたくなるような案を提案せよ!」です。若手社員が職場や仕事を好きになり、イキイキと活躍してもらいたいという想いでお願いしたお題です。
──どんなアイデアが出てくると予想していましたか?
学生には“飛んだ”アイデアを期待していました。長く社会人をやっていますと、先入観や固定概念がつきものですから。プレゼンテーションに至るまでの期間、学生からは数多くの質問が寄せられ、誠実に回答するように努めました。「学生はこういう観点で質問してくるのか。鋭いなぁ」と感心することも多く、彼らが大学で学んだことを活かしながら提案内容を考えてくれている姿勢に感動しました。本当に熱心で意欲的でしたね。
学生から学んだ意外な発見とアイデア

──4つのグループからは、どのような提案がありましたか?
各グループのプレゼンには、学生らしい遊び心やゲーミフィケーション的な要素が盛り込まれていて驚きや感動がありました。1つめの課題に対するアイデアでは「中高生を対象とした地方暮らしのホームステイ&インターン」というものでした。2つめの課題へのアイデアとしては、若手社員の「想い」を活かすためのツールや仕組みの導入に関する提案がありました。
立教大学経営学部ではデータやエビデンスを大切に扱われており、彼らの提案の中にもその思想が活かされている印象でした。
たとえば、「Z世代は『Look at me文化』である。不確実性の高い時代だからこそ、自分の現在地を知るためにフィードバックをもらうことを重視する傾向がある」「働きやすさよりも働きがいを重視している」といった点の調査データやエビデンスを示しながらの提案でした。説得力があり、プレゼンを聞いていた当社社員は大いに感心していました。
立教大学経営学部ではデータやエビデンスを大切に扱われており、彼らの提案の中にもその思想が活かされている印象でした。
たとえば、「Z世代は『Look at me文化』である。不確実性の高い時代だからこそ、自分の現在地を知るためにフィードバックをもらうことを重視する傾向がある」「働きやすさよりも働きがいを重視している」といった点の調査データやエビデンスを示しながらの提案でした。説得力があり、プレゼンを聞いていた当社社員は大いに感心していました。
──とくに印象に残った出来事は何ですか?
当社の人財戦略のコアアイデアである「想い」について、「見直したほうがいいですよ」という提言に、学生ならではの大胆さを感じました。彼らは、「想い」は仕事面だけに限定せず、仕事は人生の一部であるためプライベート面の「想い」も含めるべきだと主張をしてくれました。
じつは、当社の人財戦略における「想い」は彼らの主張通り、プライベート面も含む「ありたい姿、めざす姿」のことを言っています。彼らの提言により、もしかすると人財戦略や「想い」という言葉の真意は、当社社員にまだ確実に伝わっていないのはないかと考えました。
じつは、当社の人財戦略における「想い」は彼らの主張通り、プライベート面も含む「ありたい姿、めざす姿」のことを言っています。彼らの提言により、もしかすると人財戦略や「想い」という言葉の真意は、当社社員にまだ確実に伝わっていないのはないかと考えました。
──このプロジェクトを通じてインダの皆さんが得た気づきは何でしたか?
プレゼンテーションを受けた当社メンバーから「大学2年生がここまでできるとは!」というコメントが複数ありました。どのグループも、独自の視点や分析、考察がしっかり盛り込まれていて、感銘を受けたとのことです。
新卒入社1~2年目の当社社員にも一部参加してもらったのですが、学生と接することは彼らにとって振り返りや仕事へのモチベーション向上の機会になったようです。
また、他の参加メンバーにとっても若者の価値観や思考、志向を理解する貴重な機会になったと考えています。会社の持続的成長を実現するには、いつの時代であっても、若者を理解し、彼らの活躍をいかに支援するかを考えることが大切です。この点について、これまで以上に真剣に考える企画になったのではないかと思います。
新卒入社1~2年目の当社社員にも一部参加してもらったのですが、学生と接することは彼らにとって振り返りや仕事へのモチベーション向上の機会になったようです。
また、他の参加メンバーにとっても若者の価値観や思考、志向を理解する貴重な機会になったと考えています。会社の持続的成長を実現するには、いつの時代であっても、若者を理解し、彼らの活躍をいかに支援するかを考えることが大切です。この点について、これまで以上に真剣に考える企画になったのではないかと思います。
キャリア形成の新たな視点:種部の歩み

──話は変わりますが、種部さんはこれまでどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
パナソニック インダストリーは、私にとって5社目の就職先です。職種で見ると、最初の2社では営業を、3~4社目では人材・組織開発コンサルタントを、5社目であるパナソニック インダストリーでは人事部門の一員として人財育成や組織開発に関わる仕事をしています。主に、部長・課長の皆さんの支援を担っています。
──どのような経緯でインダに転職したのでしょうか?
前職で人的資本研究会という場を開催していたのですが、その場で、約10数年ぶりに、当時パナソニックグループの人事担当者だった方と再会したことがきっかけです。その方に「部課長を外部からでなく、内部から支援してみませんか」とのお誘いをもらい、これまでの経験やスキルをフルに活かす良い機会ではないかを思い、転職を決意しました。
──インダに転職してみて、これまでとの一番大きな違いは何でしたか?
事業会社の部課長を外部から支援することと、内部から支援することではさまざまなことが大きく異なるんだなと日々感じています。内部にいますと、リアルな現場や、掲げている経営・事業戦略や人財戦略を踏まえた施策を企画・実施できます。これは、外部からの支援ではできそうでなかなかできないことです。
──種部さんが現在支援している部課長に、今回のプロジェクトで得た学びを伝えるとしたら何を伝えたいですか?
今回のプロジェクトであらためて感じましたが、若者にはものすごいポテンシャルがありますので、それを解放し、時に方向づけてあげるのが部課長の役割かと思います。
気をつけたいのは、今の若者たちは、現在の部課長世代とは異なるキャリア観を持っているという点です。彼らは新卒入社直後から活躍したいとか、やりがいのある仕事をしたいと思っています。また、「この会社に居続けて、自分の将来は安全か」という心理を持っていると言われています。かつての同級生が他社で有意義な経験を積んでいることを知ると、「自分は出遅れている」と不安になり、転職を考え始めるようです。
このようにキャリアや転職に関する考えや感度が部課長世代とは異なりますので、彼らの志向や思考をまずは理解すること、そしてそれを支援することについて自ら経験学習することを、部課長には意識してもらえればと思います。
気をつけたいのは、今の若者たちは、現在の部課長世代とは異なるキャリア観を持っているという点です。彼らは新卒入社直後から活躍したいとか、やりがいのある仕事をしたいと思っています。また、「この会社に居続けて、自分の将来は安全か」という心理を持っていると言われています。かつての同級生が他社で有意義な経験を積んでいることを知ると、「自分は出遅れている」と不安になり、転職を考え始めるようです。
このようにキャリアや転職に関する考えや感度が部課長世代とは異なりますので、彼らの志向や思考をまずは理解すること、そしてそれを支援することについて自ら経験学習することを、部課長には意識してもらえればと思います。
見えないところから、見違える世界に変えていく

──話を学生との共同プロジェクトに戻します。今後の展望をお聞かせください。
このプロジェクトを通じて、学生たちに「インダっておもしろい会社だな」と感じてもらえていたら、本当に嬉しいです。私たちはBtoB企業であるため、とくに文系の学生にとっては縁遠い会社なのでしょう。
将来的に彼らが仕事を選ぶ際に、インダだけでなくこのBtoBの会社を選択肢として考えてもらうためには、非常に有意義なプロジェクトだと感じています。参加した学生が数年後にインダへ入社して、一緒に働けることがあれば、さらに嬉しいですけどね。
将来的に彼らが仕事を選ぶ際に、インダだけでなくこのBtoBの会社を選択肢として考えてもらうためには、非常に有意義なプロジェクトだと感じています。参加した学生が数年後にインダへ入社して、一緒に働けることがあれば、さらに嬉しいですけどね。
──「見えないところから、見違える世界に変えていく」ために、種部さんは今後、どのような「想い」を動かしたいですか?
インダがめざす「目的・未来志向で挑戦する」人や組織、文化をみんなで築いていきたいです。厳しいけれど楽しい、昨年よりも今年は成長している、そんな日々を通じて、「見違える世界」をつくる会社になればと考えています。
また、「3~5年前よりも元気な部課長が増えたね」という声がどこからか聞こえてくるようになるのが理想ですね。部課長がイキイキと働き、社員が働きがいを感じることで、組織全体が活性化していけばと期待しています。インダではジョブ型人財マネジメントへ移行しており、マネジメント変革が求められています。
マネジメント実践研修を機会提供するだけでなく、部長同士や課長同士のネットワークづくり支援も重要な任務です。組織内のリーダーたちの共創の基盤をつくり、彼らの活躍を支援していきます。
また、「3~5年前よりも元気な部課長が増えたね」という声がどこからか聞こえてくるようになるのが理想ですね。部課長がイキイキと働き、社員が働きがいを感じることで、組織全体が活性化していけばと期待しています。インダではジョブ型人財マネジメントへ移行しており、マネジメント変革が求められています。
マネジメント実践研修を機会提供するだけでなく、部長同士や課長同士のネットワークづくり支援も重要な任務です。組織内のリーダーたちの共創の基盤をつくり、彼らの活躍を支援していきます。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです