【CHROレポート】挑戦者こそ進化の旗手──CEOと語る人財戦略への想い

視点を変えれば世界が変わる。自分だけの「物差し」を疑え

梅村 :
小澤さんはCEO就任以来、「インダのめざす姿」について活発に社内にメッセージを発信していますよね。今回は「CHROレポート」として社外にも同時に発信することになりますので、あらためてお話を伺いたいと思います。
小澤 :
私がめざすのは、社会変革のドライバー企業として唯一無二の価値を生み続ける会社となることです。その大前提として、「インダの強み」を把握することが不可欠です。各事業の強みを見極め、それが見いだせないなら新たに作りだしていく。
そして、その強みを全社員が共通認識として共有し、「この事業は他社に絶対負けない」と自信を深めて挑戦への意欲を一丸で高めたい。自信こそが進化を生み出す原動力と捉えています。
そして、その強みを全社員が共通認識として共有し、「この事業は他社に絶対負けない」と自信を深めて挑戦への意欲を一丸で高めたい。自信こそが進化を生み出す原動力と捉えています。
梅村 :
インダのめざす姿に向けた、小澤さんにとってのあるべき社員像とは?
小澤 :
社員の皆さんには常に視野を広げ、自分たちの価値や実力を測る「物差し」をアップデートし続けてほしい。パナソニック インダストリーは国内外に80近い拠点があります。他拠点との交流を通じて、多様な知見に触れることができます。
部署異動の制度に頼るだけでなく、自ら積極的に他部門や他拠点と交流の場を作ってほしい。そうして異なる視点の物差しで測れば、思わぬ気づきを発見できます。
部署異動の制度に頼るだけでなく、自ら積極的に他部門や他拠点と交流の場を作ってほしい。そうして異なる視点の物差しで測れば、思わぬ気づきを発見できます。
梅村 :
2022年の事業会社化を機にインダは独自の人財戦略を打ち出してきました。「想いを、動かせ。」を人財戦略コンセプトとし、役割ごとの人財要件を明確に定義した上で、社員が想いを動かしやすくなるように制度を整え、学びと挑戦の機会を広げてきました。小澤さんは、インダの人財戦略にどのような印象を持っていますか?
小澤 :
さまざまな拠点や事業を担当してきた中で、私が最も重視してきたのは「働きやすさ」の担保でした。ここ数年間の人事部門による活動で、働きやすさの面は大きく進化したと感じます。とくにキャリア採用者の拡大により、パナソニック インダストリーだけの視点にとどまらず、新たな価値観や多様な考え方が取り入れられてきていると実感しています。
ただ、最終的に私たちがめざすべきは「働きがい」です。土台となる働きやすさが整った今こそ、次のステップとしてさらにアップデートしていくことが求められています。
ただ、最終的に私たちがめざすべきは「働きがい」です。土台となる働きやすさが整った今こそ、次のステップとしてさらにアップデートしていくことが求められています。
「1+1」を「無限大」に。多様性こそが挑戦の原動力

梅村 :
これまでのキャリアを振り返り、小澤さんが「働きがい」を実感できたのはどういったシーンでしたか?
小澤 :
私は、材料技術者として研究開発に没頭できる環境にとても働きがいを感じていました。当時は早朝から出社して無我夢中で実験に打ち込みましたね。試行錯誤した分、今までにない性能結果を発見できた時の高揚感は記憶に残っています。
そこからさらに研究のギアが上がり、前のめりに乗っていける。そして、一つの区切りがついたらしっかり休む。そんなメリハリのある働き方で、イノベーションを生み出してきたと実感しています。
そこからさらに研究のギアが上がり、前のめりに乗っていける。そして、一つの区切りがついたらしっかり休む。そんなメリハリのある働き方で、イノベーションを生み出してきたと実感しています。
梅村 :
一方、継続的な事業成長を前提とした時に、現在のパナソニック インダストリーの「働きがい」において、何が必要でしょうか?
小澤 :
パナソニック インダストリーは、異なるバックグラウンドを持つ事業が一つになっている組織で、その多様性こそが強みです。本来であれば新たな価値を生み出せるポテンシャルが備わっている。所属組織や拠点の中で完結してしまったり、壁をつくってしまったりでは、せっかくのポテンシャルを生かしきれません。
「1+1=無限大」とするために、全員が一つのチームとしてオープンに交わり、切磋琢磨できる風土を育てていきたい。
「1+1=無限大」とするために、全員が一つのチームとしてオープンに交わり、切磋琢磨できる風土を育てていきたい。
本気で挑戦できる人を、全力で応援できる組織へ

梅村 :
社内に向けた小澤さんのメッセージで、「めざす姿に向けて、われわれは変わらなければならない。変わろうと挑戦する方々を、会社は全力でサポートする」という強い言葉が印象に残りました。その“想い”を聞かせてください。
小澤 :
挑戦する人は、信じる道に向かって覚悟を持って前に進んでいます。失敗のリスクがあっても手を止めず、もがきながら進もうとする。その姿勢こそが組織を動かし、進化の火をともす力となります。
私は、失敗してでも前に進もうとする人を全力で応援する風土をつくりたい。挑戦者が輝ける組織がでなければ、この会社に成長はありません。
私は、失敗してでも前に進もうとする人を全力で応援する風土をつくりたい。挑戦者が輝ける組織がでなければ、この会社に成長はありません。
梅村 :
組織や集団のパフォーマンスを語る時に、松下 幸之助創業者が提唱していた意欲の比率を表す「2:6:2の法則」が思い浮かびます。
小澤 :
変革を推し進めてきた今のインダは「4:2:4」の状況になり、中間層が減りつつあると感じています。「想いを、動かせ。」という新しい人財戦略に共感したり、新制度の後押しを受けたりして前向きに一歩を踏み出す「挑戦層」が4割に高まっている。半面、変革に対して傍観的な姿勢の人は意欲の低い方に振れているように感じています。挑戦者が増えなければ、いくら制度を変えてもミッションもビジョンも成し得ません。
だから私は、現場からもっと多くのリーダーが生まれてくることを強く願っています。ここで言うリーダーとは、肩書や役職ではありません。現状を変えようと声を上げられる人、課題に向き合い仲間を巻き込みながら前に進む人。それが求められるリーダー像です。
だから私は、現場からもっと多くのリーダーが生まれてくることを強く願っています。ここで言うリーダーとは、肩書や役職ではありません。現状を変えようと声を上げられる人、課題に向き合い仲間を巻き込みながら前に進む人。それが求められるリーダー像です。
梅村 :
リーダーの役割とは「どれだけ早く、自分を越えていく人を育成できるか」で測るとする考え方もあります。
小澤 :
まさに、そこです。これからは「未来のリーダー」を、いかに1人でも多く育てられるかが肝となります。まずは、今の上司や責任者が、未来のリーダーが持つ「天分の可能性」に気づき、積極的に後押しできる職場環境を整える。
未来のリーダーが自分の力を存分に発揮できるかどうかは、周りの上司にかかっています。それを責任者の使命とし、その数を評価項目にしてもいいと考えています。
未来のリーダーが自分の力を存分に発揮できるかどうかは、周りの上司にかかっています。それを責任者の使命とし、その数を評価項目にしてもいいと考えています。
見えないところから、見違える世界に変えていく

梅村 :
挑戦という言葉は、ややもすると過度にプレッシャーとなる場合もあります。小澤さんは挑戦をどのように定義していますか?
小澤 :
挑戦とは、今までになかったことに踏み出すことだと定義しています。たとえば、製造現場であれば、現状に課題意識を持ち「今日よりも明日、生産性を上げる」、「不良を減らすために、やり方を変えてみる」といった一つひとつの改善が挑戦です。
新しい業界に打って出る。新たな顧客を開拓する。革新的な技術を生み出す。すべての挑戦には共通して、「今までにとらわれず、新しい価値をつくる」という想いがあります。
現状維持に甘んじることなく、自分たちの手で未来を切り拓く──そういう行動こそが、組織を変え、会社を強くする力になります。
新しい業界に打って出る。新たな顧客を開拓する。革新的な技術を生み出す。すべての挑戦には共通して、「今までにとらわれず、新しい価値をつくる」という想いがあります。
現状維持に甘んじることなく、自分たちの手で未来を切り拓く──そういう行動こそが、組織を変え、会社を強くする力になります。
梅村 :
大小の規模にかかわらず、想いを持ち行動した時点で挑戦が始まっているということですよね。小澤さんは「Teamインダ」という言葉を発信していますが、将来の会社像とどう結びついているのでしょう?
小澤 :
冒頭で申し上げたように、私がめざすのは唯一無二の価値を生み続けることで社会変革のドライバーとなる会社です。Teamインダは、まさにその手段。パナソニック インダストリーだからこそできるユニークな挑戦を、一つまた一つと積み重ねていくことで初めて存在感が際立ちます。いわば、事業という「仕掛け」を通じて未来を獲得していくイメージです。
ただし、それは1人では決して成し遂げられません。志を同じくする仲間がそれぞれの強みを持ち寄り、チームで挑む。それがあってこそ、誰にもまねできない価値が生まれます。
ただし、それは1人では決して成し遂げられません。志を同じくする仲間がそれぞれの強みを持ち寄り、チームで挑む。それがあってこそ、誰にもまねできない価値が生まれます。
梅村 :
目標とすべき会社像をキーワードで伝えることで、社員も想像力が働き、行動がしやすいと思います。
小澤 :
私たちは主にBtoB向け商品を取り扱い、お客さまのご要望に忠実に応えることを第一にしてきました。もちろん、それは大切な姿勢です。
しかし、他社と似たような横並びのものを作って甘んじているとすれば、その時点で私は負けだと思います。「パナソニック インダストリーでなければできない」と胸を張って言えるものをもっと増やす。その一つの手段として、源泉である要素技術を磨くことが重要です。
独自の強みに磨き上げ、まねのできない価値を生み出す。この考えが一人ひとりに浸透すれば、もっとおもしろいアイデアが生まれるはずです。
しかし、他社と似たような横並びのものを作って甘んじているとすれば、その時点で私は負けだと思います。「パナソニック インダストリーでなければできない」と胸を張って言えるものをもっと増やす。その一つの手段として、源泉である要素技術を磨くことが重要です。
独自の強みに磨き上げ、まねのできない価値を生み出す。この考えが一人ひとりに浸透すれば、もっとおもしろいアイデアが生まれるはずです。
梅村 :
これから、国内、さらに世界にどういうインパクトを与えていきたいと考えていますか?
小澤 :
パナソニックブランドには、長年にわたり築き上げてきた「安心感や信頼感」という確固たるイメージがあります。これは大きな強みである一方で、脱却しきれていない部分でもあります。
私たちは既存のブランド価値に頼ることを卒業し、「パナソニック インダストリーって、こんなにおもしろいことをやっているのか!」と世の皆さまに新たな価値を認めていただけるよう大胆に進化しなければなりません。
私たちは既存のブランド価値に頼ることを卒業し、「パナソニック インダストリーって、こんなにおもしろいことをやっているのか!」と世の皆さまに新たな価値を認めていただけるよう大胆に進化しなければなりません。
梅村 :
「見えないところから、見違える世界に変えていく。」──当社が掲げるビジョンステートメントの実現に向け、今のTeamインダが果たすべき使命とは何でしょう?
小澤 :
インダが生み出すすべての製品において、「変革のドライバー」となる唯一無二の価値をチーム一丸となって創出していくことです。私たちの根幹には、材料やプロセスといった要素技術やテクノロジーの強みがあります。
私たちの会社にはさまざまな強みを持った仲間がいます。これらを最大限に生かし、お客さまや社会が驚くようなイノベーションを生み出し、社会変革を引っ張っていく存在になる。
私たちの会社にはさまざまな強みを持った仲間がいます。これらを最大限に生かし、お客さまや社会が驚くようなイノベーションを生み出し、社会変革を引っ張っていく存在になる。
梅村 :
インダのデバイステクノロジーで社会にイノベーションを生み出す。並行してインダ社員の挑戦が、保守的なパナソニックのカルチャーを攻めの姿勢に変えていく。
これはパナソニックグループをはじめとするJTCと呼ばれる日本の老舗企業の経営カルチャーをも変えていくことだと、私は考えています。
これはパナソニックグループをはじめとするJTCと呼ばれる日本の老舗企業の経営カルチャーをも変えていくことだと、私は考えています。
小澤 :
「見えないところから、見違える世界に変えていく。」すなわち、インダがいなければ新しい世界が成り立たない──そんな会社をつくり上げていきたい。「改善後は改善前」という言葉が示す通り、進化に終わりはありません。次に何をすべきか貪欲に挑戦し続ける。私はそんな挑戦者を常に全力で応援していきます。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです