電子部品業界で社会課題に挑む──100年企業がベンチャーマインドで描く、経営戦略への「想い」
電子部品は成長し続ける市場であり、日系企業が高いシェアを占める領域
──パナソニック インダストリーが扱う「電子部品」とは、どのようなものなのでしょうか。
なお、電子部品だけでなく、テレビやスマホ、半導体などが含まれる電子情報産業のグローバルな市場規模は、生産額ベースで440兆円と言われています。そのうち、われわれが関わっている電子部品の市場は約30兆円規模。実はこのうち4割近くのシェアを、当社も含めた日系企業が占めていると言われています。
──4割ですか。最近では韓国や中国も電子機器に強い印象がありますが、まだまだ日本も強いのですね。
1つめは、商品のコア技術について独自の強みを有していること。海外メーカーが簡単に真似できるものではないので、追随しづらいという状況です。
2つめは、技術進化が激しいジャンルであること。時代の一歩二歩先を見る鋭い感覚と技術革新は、日本のメーカーの得意分野。これらを踏まえ、常に新たな価値の創出に挑み続けながら業界をリードしています。
──そんな電子部品業界において、パナソニック インダストリーはどのような位置づけにありますか?
業界全体としては、波は当然ありますが、過去から成長を続けています。最近は電気自動車やIoT端末などが普及して情報通信のデータ量が増加傾向にあるなど、電子部品の需要はますます拡大中です。今後も中長期的な成長トレンドは変わらないと見ており、当社も業界内でのプレゼンスをもっと高めていきたいと考えています。
車載CASE、情報通信インフラ、工場省人化。3つの領域から社会課題の解決をめざす
──売上高における、国内・海外の割合はどのくらいですか?
──注力している領域を教えてください。
まず「車載CASE」は、車載機器に活用されるコンデンサやリレーなど、自動車の電動化に関する領域です。高効率なコンデンサで航続距離の延長などに貢献できるのはもちろん、自動車においては何よりも安全を担保しなくてはなりません。とくに電気自動車の車内には大電流が流れており、仮に事故が起きたとしても確実に電流を絶って火災を防止する必要があります。そういった点においても、当社の商品が貢献しています。
「情報通信インフラ」は、高速でも安定した通信を実現するコンデンサや、高度化する半導体の性能や信頼性を高める半導体材料などが活躍する領域です。AIの進化やIoT社会の発展に伴い、国や地域を問わず、情報通信ができないと世の中がまわらない状況ですよね。そんな社会を支え、利便性をより高めていきます。
最後に「工場省人化」は、工場設備の自動化や小型化、高速化によって、モノづくりの生産性向上を実現する領域です。グローバルに見れば、労働人口が減少傾向にある国や地域が存在し、大きな社会課題となっています。そのような状況を踏まえながら、それぞれのお客様のお悩みやご要望にも向き合い、最適なモノづくりを実現できるよう、日々、挑戦し続けています。
──いずれも、社会課題の解決や世の中の発展につながりますね。
──最近、業界では最先端の「スマートラボ」を設置されたと聞きました。また、2024年には東京・虎ノ門に新拠点を設立されるそうですね。
将来的にラボが拡大すれば、首都圏にいながら地方のラインを動かせたり、国内にいながら海外のラインを動かせたりと業務の効率化が期待できます。さらに、働き方の面でも勤務条件の制約がなくなるため、社員にとっても非常に魅力的な取り組みではないかと考えています。
想いがあれば活躍できる環境がある。強い事業基盤の中で、イチから立ち上げる醍醐味
──多和さんは、車載向け電気機器メーカーやグローバルコンサルティングファーム、中堅メーカーでの会社役員などを経て、2018年にパナソニックグループに中途入社されていますよね。入社後に、どんな社風を感じましたか?
その後、2022年4月にパナソニックが事業会社制へと移行し、ホールディングスと事業会社に分かれることに。それまでは事業のことを考えていれば良かった環境から、1つの事業会社として自分たちで経営していくことになったのです。そのため、まずは社名を決めたり、ミッションやビジョンを考えたり、事業会社としての基盤や仕組みを整備していくプロジェクトが始まったわけです。
そこに経営企画部として携われたのは、非常に幸運でした。考えてみれば、すでに長い歴史や実績を持ち、1.1兆円規模の事業を抱えていながらも、ベンチャー企業のようにイチから会社を立ち上げるような取り組みを体験できるというのはめったにない機会で、とても貴重なこと。今はまだ事業会社化して2年目であり、本当にチャレンジしがいのあるフェーズに立ち会っているなと思いながら、日々の業務に向き合っています。
──入社されて5年ほど経ちました。多和さんは今、パナソニック インダストリーで働いていてどんな想いを抱いていますか?
1つめは、まずは自分が純粋に仕事を楽しめること。
2つめは、家族や友達に誇れる仕事であること。
3つめが、社会の役に立つ仕事であること。
まさに今、3つの軸が揃っていることを実感できているので、とても充実した気持ちです。
また、当社には、やる気次第で活躍できる環境があります。キャリア採用での入社、かつ当社での勤務経験もそれほど長くない私にも、社長や経営幹部、関係部門のみなさんや同じ部門の仲間たちが、真剣にコミュニケーションをとってくれます。おもしろかったらおもしろい、違うと感じたら違うと言ってくれるし、同じ方向をめざして高めあえるからこそ、自分でやりたいことを見つけて積極的に提案し、挑戦していけるのだと思います。
今は、全社の経営戦略など会社の根幹に関わるような業務に携わっていますが、挑戦を後押しする社風は常に感じており、入社前の想定以上にやりがいがあって楽しい毎日です。ちなみに、ミッションやビジョンの策定に関わることができたことで、会社への愛着がより深く、強くなったと感じます。
業務への取り組み方としては、積極的にバッターボックスには立ってきたつもりです。ただし、今までは投げられた球をいかにうまく打ち返していくかということに集中する傾向がありました。しかし、これからは、自分たちが課題を発見してめざす姿を描き、多くの仲間たちと一緒に実現をめざしていければ良いなと思っています。
誰かが投げたボールを打ち返すというバッターの仕事も大切ですが、試合はピッチャーがボールを投げなければ始まりませんよね。私たち経営企画がピッチャーのように、持続的な成長に向けて適切なタイミングで会社に新たな課題や問いを設定していくこともできればと思っています。
見えないところから、見違える世界に変えていく
──先ほどもお話がありましたように、中期経営計画では2030年度に売上高1.8兆円をめざしていくと掲げています。実現するために、具体的にどのような取り組みをされるのでしょうか。
たとえば、当社では経営のど真ん中に人を据えた経営を行うと言っているのですが、その「人」は変わっていけますよね。中長期経営戦略の1つである人財戦略を通じて、いかに社員のみなさんが安心して働けて、主体的に学び、挑戦していけるか。その挑戦がきちんと評価され、実感を伴った成長を遂げていけるか。これらのサイクルをうまくまわしていくため、人事部門を中心としてさまざまな取り組みを進めています。
自由に挑戦し、成長できる環境があれば、すでに社内にいる社員はもちろん、新しく入社されるみなさんにも活躍していただけるのではないかと思います。繰り返しになりますが、事業成長の実現に最も大切なのは人。心から共感してもらえるようなめざす姿や目標を掲げ、発信し続けながら、素晴らしい仲間が集まる基盤を一丸となってつくっていきます。
──多和さんとしては、パナソニック インダストリーをどんな会社にしていきたいと思っているのでしょうか。
1つは当社がビジョンを実現し、「未来の兆しを先取り、お客様とともに社会変革をリードすることで“見えないところから、見違える世界に変えていく。”」会社です。社会変革とは、たとえば、スマートフォンが世に出て消費者の生活様式が一変するようなことですから、それをリードするのは容易ではありません。それでも、勇気を持って向かう方向を定め、そこに旗を立てたのが今です。その道中には、成功も失敗もあるでしょう。しかし、決めたからには果敢に挑戦し、実現していきたいと考えています。
もう1つは、今まで以上に「物をつくる前に人をつくる」会社。当社が人に強くこだわっていることを世の中に知ってもらい、優秀な人材輩出企業となる。もう退職していますが、実は両親もパナソニックで働いていて、私は幼少期からずっと「いい会社だよ」という話ばかり聞いて育ちました。その後、縁があってキャリア採用として入社し、今に至るのですが、本当に良い会社だと思います。当然、厳しさもありますが、根底には人へのこだわりがあり、それは事業会社化後、より一層強くなってきていると感じます。
これら2つの姿を実現した先に描くのは、社員がとにかく楽しく幸せに働くことができ、家族や仲間に誇れるような会社。また、お客様から頼られ、安心感を抱いていただける会社。そして、社会から広く愛され、憧れられるような会社にしたい。実現したい未来はたくさんありますが、「パナソニック インダストリーがあるから世の中が良くなっていっているな」と感じていただけるようになるといいなと思っています。
こうした未来を実現していくための私たちの仕事や商品は、世の中からは見えにくいかもしれません。しかし、見えにくいけれど、なくてはならないもの。私たちが良い仕事をして、それら1つひとつを積み重ねていくことこそが、見違える世界に変えていく一番の近道だと信じています。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです