ゼロからイチを生み出す情熱──次世代材料開発に捧ぐ「想い」
最先端電子材料の開発に挑む

近年、生成AIの進化などによってデータ使用量の増大は著しい。データ通信の高速化を遅滞なく進める上で、高性能な電子回路基板材料や封止材料といった電子材料は欠かせない。たとえば完全自動運転が普及すれば、さらなるデータ通信量の増加は確実で、同時に安全に直結する信頼性にもより高度な性能が求められる。
「パナソニック インダストリー(以下、インダ)の技術部門は、10年単位の長期・5年程度を見据えた中期・より商品化に近い短期、と開発スパンごとに組織が分かれています。私は電子材料事業部の中で、電子回路基板で使用する樹脂材料の中期的なスパンでの開発を担当しています」
世の中やお客さまのニーズを調査し、さまざまな分野で困り事を解決できるような新材料の開発を行い、世界中のお客さまと社会に貢献ができる商品を5年後には生み出すことがミッションとなる。
「汎用的な製品ではなく、車載品やAIサーバー用など特定の分野に特化した材料が求められています。性能アップとともに、ハードな使用環境の中で安全性をどれだけ担保できるかが、電子材料開発のカギ。インダの技術力を結集したオンリーワンの新製品を作りたいと考えています」
仲本が担うのは樹脂材料の開発。電気を通さない性質を持つ樹脂材料は、基板材料において高速通信に伴う電気信号の伝送ロスを抑えるために、その進化は欠かせない。
「樹脂材料の開発の大まかな流れは、1.化学反応を利用し高機能な樹脂を得る樹脂設計、2.複数の樹脂を組み合わせて目的の機能を得る材料設計、3.材料を基板へ加工するプロセス設計、という3段階があります。私が担当しているのは樹脂設計と材料設計です。当社は樹脂合成を担っていないので、樹脂のサプライヤーと密接にタッグを組んで、新樹脂の設計開発を行っています」
入り口にあたる樹脂のサプライヤーとの連携が全行程のスタート地点。合成された原料を配合し、評価するサイクルの中で性能アップに試行錯誤を繰り返す。技術の仕事は黙々と研究に打ち込むものとイメージされがちだが、じつは社内外のさまざまな部署との関わりがある。技術部門だけでなく、営業・経理・知財・広報など多方面とのコミュニケーション能力も大事だと仲本は言う。
「前職が樹脂メーカーだったので、サプライヤーの工程上の課題や制約について想像が及びます。だから原料をオーダーするときも、相手の言葉で会話ができるのは私ならではの強み。また新規材料開発はサプライヤーに本気になってもらうことも大事です。将来どれだけの事業になるのか適切に分析を行い理解をしていただく必要があります。
言い換えれば、私たちが描く事業に投資をいただくということ。その期待に応えたいという想いは、がぜんモチベーションにつながります。一方で開発の遅れは相当なプレッシャーになります」
社会に役立つ実感を求めて──キャリアの転機と挑戦

現在、33歳の仲本。インダは3社目にあたる。大学卒業後に就職したのは樹脂材料メーカー。まさに工程の1段階目を担う、国内の大手企業だった。約5年、研究開発を担いながら機械学習やデータマイニングなどのAI技術を活用して材料開発を効率化するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)活用推進を任されるようになった。
やがて、仲本はさらなるやりがいを求めて転職。プロセス開発のスタートアップ企業に入社した。そこでの仕事は新規プロセスの開発と社内DXの推進。
ただ、開発とDX推進という異なる仕事を兼務するのが、あまりに大変で……。結果として1年足らずでやめてしまうことになり、とても悔しい一種の挫折経験となりました」
2社での経験を経て、「社外との関わりが多い企業で開発に従事したい。社会に役に立っていると実感したい」と、仕事に求めるものがはっきりした。しかし転職活動を始めると多くの企業が非常に具体的な専門的知識・経験を求める募集要項を出しており、「これには当てはまらない」と応募に躊躇することも多かったと言う。そんな中で出会ったのが、インダだった。
その直感は入社後に正しかったと実感した。
必要なのは「化学に関する基礎知識」と「ギャップを埋める主体的行動力」

もう1つ、パナソニックグループの一員となったことも転職で得た大きな財産だと言う。パナソニックならではと言える、長年築き上げられてきた業界内での強いコネクション、さらにグループ内の実験ラボが使えるなど、社内外に研究のリソースは豊富だ。
そもそも技術は進化が著しい領域です。だからこそ、新しい知識や技術を自ら率先して学んで身につけようとする資質や情熱といった主体的行動力は研究開発において必須だと思います。その点でインダはキャリア採用においても目先の専門的スペックに条件を絞りこみすぎずに、門戸を広く開けていてくれたのだと感じています」
転職して2年目、仲本はベルギーの半導体研究機関に3週間滞在する機会を得る。目的は、最先端設備を使用した自社材料の立会試作と先方幹部へのプレゼンテーションによる自社技術の認知度向上だ。研究機関が擁するサッカーコート一面分の広さを誇るクリーンルーム、天井の高さ、並ぶ装置の数──その光景に「とにかく圧倒された」と振り返る。
日本から長期で来ている他社の駐在員には仲本と同年代も多かった。若手のメンバーが現地職員と活発にコミュニケーションして日本へフィードバックする姿は、仲本にとって大きな刺激となる。仲本は個室にこもらず、フリーアドレスの場に身を置き、現地技術者や他社駐在員との会話を重ねることにした。半導体技術の進化や新材料の方向性など、普段は耳にできないリアルな議論に触れたことは、大きな財産になったという。
見えないところから、見違える世界に変えていく

ベルギーでの経験を通じて、仲本の「働きがい」はさらに広がった。若手や同期が海外で活躍している環境に刺激を受け、社外との協力や新しいテーマへの挑戦意欲がさらに高まったと語る。
入社して2年半。既存の研究開発を引き継ぎ、研究にいそしむ仲本だが、今後の1~2年以内にテーマリーダーとして研究テーマを推進し、まだ誰も見たことのない電子材料を世に届けることを目標に設定している。
仲本はさらに、これまでの経験を生かして新たな仕事にも挑戦したいと考えている。
社内の研究開発を加速するためにも、体制を改革し、より効率的な開発環境を整えるために力を注いでいきたいと思っています。既存の強みをいっそう磨きながら、潜在的な課題に向き合う、それができるのはキャリア採用者である自分のはずだと考えています」
インダの技術力を、余すことなく活用できるように下支えをしたい。そしてまだどこにもない新材料をゼロから開発し──見えないところから見違える世界に変えていく。 2つの想いを胸に、仲本は日々の仕事に向き合っている。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです