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2026.05.15

多角的な知見が武器になる──誰も作ったことのない新材料開発にかける「想い」

「幅広い知識が要求されるからこそ、学び続ける。誰も作ったことのないものを手掛けたい」と話す末木。2025年にキャリア入社し、スマホやAIサーバなど電子デバイスに欠かせない半導体向けのパッケージ基板材料の材料設計からデバイス評価まで幅広く担っている。世界の先端テック企業の技術革新を支えるべく挑んでいる日々を追う。

末木 洸

Sueki Hikaru

AI時代を牽引する半導体パッケージ基板の材料開発

スマートフォンやPC、データセンターのAIサーバ、通信インフラ──社会のあらゆる場面で電子機器の高性能化が進み、電気信号を処理する半導体の重要性はますます高まっている。電子材料事業部グローバル電子基材ビジネスユニットに所属する末木は、その半導体チップの土台となる「半導体パッケージ基板材料」の開発を担う。半導体パッケージ基板は半導体チップと電子回路基板を電気的に接続し、信号のやり取りを成立させる要となる部品であり、近年の著しいAIやネットワーク技術の進化に伴い、さらなる高性能化・高密度化が求められている。

「材料単体としての物性や性能だけでなく、実装先の電子デバイスの性能も分析しながら日々、新材料の開発を行っています。樹脂と言っても、いわゆる単純なプラスチックとは少し違います。有機物と無機物の材料の組み合わせは無数にあり、その中でいろいろな性能を追求できる設計の幅広さが、半導体パッケージ基板材料開発の面白さです」

半導体パッケージ基板材料は用途が広く、お客様から求められる性能も多岐にわたる。とくに、サーバ用のCPUやGPUに用いられる高密度半導体パッケージでは大型化、スマートフォンなどのICT機器向けの半導体パッケージでは小型高機能化への需要が高まっている。電子機器の安定稼働には半導体の信頼性向上が不可欠であり、とくに半導体パッケージ基板材料には熱による膨張や応力緩和などを物理的に制御する材料技術が求められているという。

「耐熱性や信頼性、高速通信を実現するための電気特性、さらに半導体パッケージの小型化に向けた加工性などが半導体パッケージ基板材料の代表的な性能の指標。現在担当しているのはNAND型フラッシュメモリ用のパッケージ基板材料で、歩留まり向上を目標としています。半導体デバイスを生産する際に、半導体パッケージ基板に半導体チップを高温で接合しますが、その熱によって半導体パッケージ基板が反り、半導体チップとの接続不良が発生することがあります。当社が保有するノウハウを生かし、この反りを何とか制御しようと奮闘しています」

多角的な知見を求められるからこそ面白い──前職の経験をベースに新たな挑戦

現在、半導体製造の後工程領域に用いられる材料の開発を担当する末木だが、もともとは半導体製造の前工程で使用する薬品を製造する化学メーカーに勤めていた。転機となったのは2025年、やりがいを求めてパナソニック インダストリー(以下、インダ)に飛び込んだ。

「前職は一つの領域を深く突き詰めるタイプの研究でした。やりがいもそれなりにあったのですが、もっとチャレンジングな環境に身を置きたいと思うようになりました。基板材料は性能の指標が多岐にわたり、化学だけでなく、電気について知らなければなりませんし、強度などの物理的な知識も必要です。非常に多角的な知識を同時に求められる開発環境なら、さらなるやりがいを得られると期待してインダを選びました」

 入社すると期待したとおり、さまざまな知識が求められる場面があり、刺激に満ちた毎日を送っている。

「これまで培ってきた化学の知識だけでは戦っていけないと実感しています。お客様も世界中にいて、国外にある当社拠点のメンバーとの連携も必須。社内では普通に英語や中国語の会話が飛び交っています。一方で、すぐ隣では原価計算のために会計用語を使っている人がいるなど、さまざまな知識・知見を持つ方が集まり、活躍しています。エンジニアリングの知識にとどまらず、どんな知識でも役に立つ環境で、さらなる成長ができる可能性を実感し、胸が躍ります」

 勤務する郡山拠点は、研究のみならず量産に向けた製品開発が多く、同じものを安定的に作るプロセス開発も一つのポイントとなる。

「前職でもプロセス開発を経験しており、安定した量産に向けた考え方や工法の組み立て方など生かせる部分もあると実感しています。工場と連携を取り、実現可能な設計かどうかを常に確認しながら開発を進めています。郡山は長く基板材料を開発・生産してきた拠点で、非常に多くの経験が蓄積されていることが特徴です。わからないところはすぐに周囲の先輩たちに教わり、いつも助けていただいています。半導体パッケージ基板材料の開発はスピードが命で、他分野での進化の速度に負けないように、常にスピード感を意識して部門全体が進んでいく活気のある開発環境だと思います」

周囲と共創し難題を突破。世界のトップ企業へ新材料提案で勝負

新しい領域に飛び込んだ末木、時には半導体パッケージ基板材料特有の難しさに悩まされることもあったという。

「半導体パッケージ基板材料などの樹脂材料は、樹脂を数種類、無機物も使用した絶妙なバランスで成り立っています。前職で行っていた薬品の調合は、薬剤を投入するタイミングやスピードはそこまで重視されませんでしたが、樹脂材料では非常にクリティカルな問題になります。ある樹脂材料の改良を任された際に、少し配合方法を変えると今まで出ていた性能が出ない上に、品質も安定しなくなってしまった。混ぜ方や混ぜるスピード、温度と言った製造プロセスの微妙な違いがキーになるとはそこまで意識していなかったのです。

先輩たちに助けてもらいながら、過去のデータを参考にプロセスの均一化を図り、性能が出せるようになりました。業界が変われば、前提とされる知識がガラッと変わると思い知らされた手痛い経験でしたが、いろいろな知識を吸収しながら進めなければならないのだと、新たな学びがありました」

 広範な知識を要求される難しい開発、その半面で大きな手応えも感じているという。

「ちょっとした改良が、どんどん量産に結びつく可能性がある職場なので、そこにやりがいを感じています。お客様の中には、世界的な半導体企業や最先端のテック企業もあり、最先端の半導体領域と直接つながっている実感を持っています。AIサーバや通信インフラの高度化で、電子デバイスが扱う情報量は増え続けています。電子デバイスの要となる半導体は、より速く、省電力で、安定して動かさねばならず、半導体チップの土台となるパッケージ基板にも高信頼性と回路の高密度化の両立が強く求められています。

回路の密度を高めるためにパッケージ基板サイズは小型化が必要ですが、小さく、薄くしていくと強度が下がってしまいます。他の性能を維持・向上させながら強度を維持するには、これまでの考え方にはない新しい半導体パッケージ基板材料を開発する必要があります。最先端の知識もさることながら、何よりも原材料の知見も開発には必要不可欠。パートナーである原材料メーカーと強力なタッグを組み、一緒に新しい製品を開発し、積極的にお客様への新材料提案を進めています」

見えないところから、見違える世界に変えていく

入社して約1年、末木は自身の転職を振り返り、求めていたものが得られたと笑顔で語る。

「いろいろな人がいろいろな事業をやっている。社内に専門家が非常に多く、その知見を生かして仕事をする環境を求めていたので、心から転職して良かったと思っています。入社前は、大企業なので意思決定に時間がかかるのかなと思っていたのですが、それはいい意味で裏切られました。電子材料事業部はビジネスチャンスを逃さず、ガシガシ食らいついて仕事を進めています。社内のさまざまなことがシステム化されており、大企業ならではの利点を享受できています。マテリアルズ・インフォマティクス(MI)担当部署があり、先進的な開発手法を積極的に取り入れるなどDXも推進されており、開発環境も大手ならではの利点が多い。技術者として大きく成長したいと考えている人なら、うってつけの職場だと思います」

そんな充実した日々をおくる末木がインダで目指すのは、誰も作ったことのない新材料を世に送り出すことだ。

「今の組織では、さまざまな知識が求められる。言い換えれば、どんな知識でも役に立つということ。組み合わせれば必ずシナジーが生まれる、そんな魅力的な開発環境に身を置いていると実感しています。周囲の熱を取り込みながら、自然に身につく知識だけでなく、社内の研修制度なども利用しながら積極的に専門外の知見も取り入れていきたいです。新しいことに挑戦し続ければ、唯一無二の経験を積むことができ、そうすれば他の人にはない、自分にしかできない発想が生まれてくると思っています」

 日常的に海外のお客様とやり取りすることも多く、海外勤務に意欲が高い人が周りにも多いという。

「私も言語習得に努力して、いつかは海外へ挑戦してみたいという想いが湧き上がってきました。サイエンスとはまた違った知識や経験が必要ですが、それをサポートしてくれる環境や制度が整えられているので、有効活用しながら海外での仕事を見据えて、日々仕事に打ち込めたらと考えています」

自ら挑戦し学び続けることで、最先端の領域を切り拓いていく末木。貪欲に学び取る姿勢は常に仕事に生かされる。見えないところから、見違える世界に変えていく──半導体デバイスを通じて、豊かな社会を実現したいとの想いを胸に開発に励む。電子基板材料で世界に飛び出していく、末木の挑戦は始まったばかりだ。

※ 記載内容は2026年5月時点のものです

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